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『ガラスの仮面』と『源氏物語』の比較 その1

会場の船の甲板にいる男女
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『ガラスの仮面』の50巻が発売されるはずだったのに、発売延期になってから数年が経ちました。原作が進まないので『ガラスの仮面』の考察はながらく休止していました。しかし『源氏物語』との比較・考察をするならば時間に余裕がある今しかないかもと思いました。

あっている・あっていないは置いておいて、趣味として比較・考察したものをご紹介しますね。

同心円上に物語が進む

『ガラスの仮面』では昔あったことと“似たできごと”が複数回、繰り返されてきました。

たとえば

  1. 北島マヤの手が速水真澄の顔にふれる
  2. 星を二人で観る
  3. 速水真澄が北島マヤにコートをかける
  4. 2人がばったり出会う
  5. 速水真澄が北島マヤを守るために抱きしめる
  6. 北島マヤが速水真澄を抱きしめる

等が思い浮かびます。

「2人で星を観る」に関しては、別記事「漫画『ガラスの仮面』の物語完結のカギは速水真澄のIT化・前編」で既に考察しました。夏目漱石『明暗』と同じように漫画『ガラスの仮面』は同心円上に物語が進んでいきます。

そして同じような事を繰り返してゆっくり進んでいた物語がだんだん加速していき、最後は直線的に結末へと進んで行くのではないか、と考察しました。同じようなシチュエーションを繰り返しながら、円の直径が徐々に短くなっていき、話の展開が早まっていくという考えです。

以前「同心円状に話が進む」と書きましたが、私見では永井孝尚さんの『100円のコーラを1000円で売る方法 2』(中経出版)p,57 「依田誠のホワイトボード」に登場したPDCAのスパイラル(3次元)にた3次元の円錐のようなスパイラルで捉えるのが良いのではないかと考えています。

ナイトクルーズの抱擁の伏線

実際、2008年に別冊花とゆめで連載が再開されてから、単行本の発売ペースは上がっています。41巻から42巻が出るまでに6年、42巻から43巻が出るまでに4年かかりました。しかし43巻以降、49巻までは発売のペースが上がりました。

  • 41巻:1998/12
  • 42巻:2004/12/16
  • 43巻:2009/1
  • 44巻:2009/8/26
  • 45巻:2010/9/30
  • 46巻:2010/10/29
  • 47巻:2011/7/26
  • 48巻:2012/2/25
  • 49巻:2012/10/5
  • 50巻:発売延期のまま

43巻から49巻まではおおよそ半年から1年に1冊のペースで発売されています。過去の未刊行原稿と重複するストーリーが多いためかもしれません。それにともなって過去に起きたエピソードと既視感がある出来事が発生します。

しかし類似したことが起きる度に、過去と現在では登場人物の状況や考え方が変わっていきます。それにともなって、登場人物たちの行動も変わっていきます。速水真澄と北島マヤは自分の感情に向き合い、相手に素直に感情を伝える。相手を思いやるという課題に取り組んでいる様が伺えます。

北島マヤは阿古夜という仮面をかぶって速水真澄に愛の告白をし、速水真澄は大都芸能社長・速水真澄という仮面を外して北島マヤに想いを伝えます。二人は本来の自分と社会的な立場を演じている自分との葛藤に向き合い、できる範囲で折り合いを付けようとしています。

『ガラスの仮面』という物語は「演じる」ことをテーマにした漫画です。そして仮面・ペルソナを利用することで登場人物は自分の感情に向き合い、本来の自分に向き合う漫画でもあります。演じることは別人の仮面をかぶることのはずです。しかし心を開放するという真逆の性質をみせています。

単行本47巻のナイトクルーズでのダンスシーンは、「奇跡の人」のヘレン・ケラー役で北島マヤが主演女優賞を受賞した時のダンスシーンと酷似しています。船の上で二人きりで夏の大三角形やスピカを見ている場面も、梅の里の小高いところで星を見たときと酷似しています。

47巻には過去にあった重要な場面と類似したことがたくさん登場しました。シチュエーションは類似しているにもかかわらず、北島マヤの言動は以前と違っています。マヤが速水真澄への愛情をはっきりと自覚したからではないでしょうか。

以前とは違うマヤの言動、女性的な魅力にあふれたマヤのドレス姿などから、速水真澄は北島マヤが大人の女性に成長していたことを自覚させられます。中学生だった少女がいつのまにか結婚できる年齢の大人になっていたのです。

「ガラスの仮面」における「源氏物語」の影響

深読み「ガラスの仮面」第一弾 「ガラスの仮面」における「源氏物語」の影響」には、

  • 速水真澄=光源氏
  • 北島マヤ=若紫(紫の上)
  • 紅天女=藤壺
  • 鷹宮紫織=女三の宮

という関係性があるのではないかと指摘しています。私も同感です。

『源氏物語』では光源氏が10歳くらいに見える若紫を垣間見し、愛しい藤壺にそっくりなことに気がつきます。若紫は藤壺の姪で、容姿がそっくりだったのです。彼女はすでに母親を亡くしていて、尼になっていた祖母の家に預けられていました。

若紫の父親・兵部卿宮は存命中です。父親の正妻が嫉妬深い人だったため、妾の娘である若紫は祖母の家にいたのでした。

 

祖母が亡くなった若紫は父親のところに引き取られることになりました。しかし光源氏は父親の兵部卿宮に無断で、若紫を自分の屋敷に引き取ります。父親のところに引き取られてしまうと、今後関係を持つことが難しくなるからです。

光源氏は若紫を自分にとって理想的な女性になるように少女の時から養育しました。そして正妻・葵の上が亡くなったあと、光源氏と若紫(紫の上)は夫婦になりました。ただし正式な婚礼を行っていないので、紫の上は正妻にはなれませんでした。

速水真澄は紫のバラのひとという架空の人物に身を託して、陰ながら北島マヤの応援・援助を行っています。11歳の年の差や置かれている社会的な状況なども、

  • 速水真澄=光源氏
  • 北島マヤ=若紫(紫の上)

の関係に類似しています。

鷹宮紫織の祖父は鷹宮天皇と呼ばれるほど財界の大物。彼女は容姿が美しく、お金持ちのお嬢様。しかも登場したときは性格がとても優しい設定でした。北島マヤには太刀打ちのできないお嬢様だったと言えます。鷹宮紫織は速水真澄がお見合い・結婚を断れないほど強力なコネを持つ女性です。「鷹宮紫織=女三の宮」の関係も成立していると考えられるでしょう。

今のところ柏木に相当する人物が『ガラスの仮面』にいません。しかし今後、北島マヤに恋愛感情を持っている桜小路優が速水真澄にイヤがらせをすることがあるとしたら、鷹宮紫織に何らかのアプローチを書ける可能性がないとはいえません。

>>つぎに続く

参考文献

『源氏物語』の本文は小学館の「新編日本古典文学全集」シリーズを参考にしています。

新編日本古典文学全集 (20) 源氏物語 (1)

4096580201
著:紫式部
訳・校注:阿部秋生、今井源衛、秋山虔、鈴木日出男
小学館 1994-03
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