【教育におけるICT】デジタルガジェットの導入は、ワークショップ形式の授業ならば有効かもしれない

先日、特別支援学校の教諭をされているヴィヴィ先生から、以下の問題提起がありました。
2011年は僕もFacebookでの情報交換等多く改めてネットワークでの情報収集や情報交換が有効な1つの手段と認識した年でした。 学校におけるICT・・・ネットワーク・・・ 自分の頭の中でも大きく2つに分けて考える様にしています。
○校務用ICT(端末やネットワークの活用含む)
○教育用ICT(ネットワークやタブレット端末も含む)
現在、学校現場では、各都道府県や市町村にも随分と違いあると思いますが、僕の職種では本来、教育用ICTに専念したいところです。
〔お題〕教育におけるICT
私はICT講師をしているので、ICTと教育は本職の話題です。しかし、一点とても困ったことがありました。というのは、小学校から高校までの教育機関で教えたことがないため、現場の実態がわからないからです。
そこで、学校の現状からは切り離して、子供の教育という観点で、学校のICTについて考えてみたいと思います。
目次
デジタルガジェットの導入はワークショップ形式の授業ならば有効かもしれない
私が学校(小学校から高校まで)に通っていたときは、「先生が教壇に立ち、教科書の内容を黒板に書きながら説明する」という形式が一般的でした。
しかし、集合講義形式では、iPadなどのデジタルガジェットを取り入れてもあまり意味がないのではないか、と考えています。ガジェットが力を発揮するのは、ワークショップ形式、実習形式の授業の場合ではないかと感じるからです。
2012年1月19日(現地時間)にApple社が教育用途の電子書籍作成ツールとして「iBooks2」と「iBooks Author」を発表しました。「.ibook」はePubを独自に拡張したような規格です。現在は日本語対応していないので、英語版がibooksで公開されています。
参考:無料電子書籍作成アプリ「iBooks Author」で何ができるかまとめムービー
実際に英語版の電子書籍を家族のiPadで観ました。「動的平衡」を英語で説明した電子書籍です。動的平衡は福岡伸一先生の本で一般の人も耳にするようになりました。wikipediaでは以下のように解説されています。
動的平衡(どうてきへいこう、dynamic equilibrium)とは、物理学・化学などにおいて、互いに逆向きの過程が同じ速度で進行することにより、系全体としては時間変化せず平衡に達している状態を言う。
系と外界とはやはり平衡状態にあるか、または完全に隔離されている(孤立系)かである。 なお、ミクロに見ると常に変化しているがマクロに見ると変化しない状態である、という言い方もできる。これにより他の分野でも動的平衡という言葉が拡大解 釈されて使われるが、意味は正確には異なる。これについては他の意味の項を参照。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8B%95%E7%9A%84%E5%B9%B3%E8%A1%A1 より引用
文章で見ると、なんだかちんぷんかんぷんでした。
また、福岡伸一先生の「動的平衡」@wikipediaには、以下の説明が書いてありました。
動的平衡
ルドルフ・シェーンハイマーの発見した「生命の動的状態(dynamic state)」という概念を拡張し、生命の定義に動的平衡(dynamic equilibrium)という概念を提示し、「生命とは動的平衡にある流れである」とした。
生物は動的に平衡状態を作り出している。生物というのは平衡が崩れると、その事態に対してリアクション(反応)を起こすのである。そして福岡は、(研究者が意図的に遺伝子を欠損させた)ノックアウトマウスの(研究者の予想から見ると意外な)実験結果なども踏まえて、従来の生命の定義の設問は浅はかで見落としがある、見落としているのは時間だ、とし、生命を機械に譬えるのは無理があるとする。
機械には時間が無く原理的にはどの部分から作ることもでき部品を抜き取ったり交換することもでき生物に見られる一回性というものが欠如しているが、生物には時間があり、つまり不可逆的な時間の流れがあり、その流れに沿って折りたたまれ、一度おりたたんだら二度と解くことのできないものとして生物は存在している、とした。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E5%B2%A1%E4%BC%B8%E4%B8%80#.E5.8B.95.E7.9A.84.E5.B9.B3.E8.A1.A1 より引用
iBooks2で観た「動的平衡」
私がiBooks2で観た「動的平衡」はルドルフ・シェーンハイマーの発見した「生命の動的状態(dynamic state)」という概念を説明した本ではないか、ということが推察できました。以下、ICT教育について考察するため、生物について書いていきます。
※私の生物の理解が正しくない点があるかもしれません。その点、誤りがあるかもしれないと思った上で読んでいただけましたら幸いです。どうぞ、よろしくお願いいたします。
iBooksで作成された電子書籍では、DNA(デオキシリボ核酸)の3D画像にタッチすると360度グリグリと回転させることができました。さわって裏側まで見えるという体験もエキサイティングでしたし、教科書で平面的に観た時(2次元)と3次元の画像で観たいところを動かして見るのでは、理解度が変わります。
「DNAは3本くらいの糸みたいな物質がねじれてできているのかな? 」と思っていました。しかし、繊維みたいな物体が球のように絡まっていて、そのまわりに更に繊維のようなものが絡まって、その塊がさらにつらなって最終的にDNAの螺旋構造になっているらしいとわかりました。
※Wikipediaの「デオキシリボ核酸(DNA)」より画像を引用
そして、DNAがいくつも絡まって、染色体のXのような形ができているということも、動画や360度指で回転できる画像によってわかりました。
平面の図と3Dのアニメ画像で学ぶと……
※Wikipediaの「染色体」より図を引用
平面の図(2次元)で見ると「ふーん」となるところです。しかし、細胞分裂しているシーンやアミノ酸が運ばれているシーンなど、3Dのアニメ画像で動的に表現されているので、理屈ではなく「そういうものなのか! 」と納得してしまいます。動画やアニメなど動的な説明だと「時間」という概念も「時系列」で表現されます。4次元ので説明されているような感覚がします。
iBooks2は当面、日本語に対応しないようです。英語のままの状態で学校の授業に利用するのであれば、集合研修でもデジタルガジェットは威力を発揮すると思います。
疑問点:在宅やワークショップで活用可能か?
英語の書籍では子どもたちが独学することが難しいため、先生が3Dの画像をグリグリ回しながら説明したり、英語を簡単に解説しながら英語の勉強も兼ねて説明できるメリットがあるからです。内容がわかったいることを英文で読むと英語のスキルもアップしやすいのではないかと考えています。
しかし、iBooks2が日本語対応された際は、集合研修で利用する魅力がなくなるのではないか、と考えています。独学でも充分に理解がしやすいからです。「先生に習うという行為」は、「独学ではわからないことを習うため」です。
電子書籍・教科書と双方向のやり取りをして学ぶことが出来るのであれば、わざわざ学校に子どもが集まって先生から説明される必要がなくなるのではないでしょうか?
在宅でもある程度のことを学ぶことは可能になるように考えています。直接先生に教えてもらいたいことはわからない点の質問と受験対策だけ、になる可能性さえあります。さらにSkypeなどテレビ電話を利用すれば、リアルな世界で子どもが集まって先生から習う行為は不要になる可能性さえあります。
グループワークとタブレット
おそらく、このようなデジタルガジェットを利用した教材が活きるのは、先生が出した課題をグループワークで生徒たちが解決していき、発表するときではないか、と考えています。グループワークではデジタルガジェットを利用して検索するメリットが出てきます。
そして、課題を発表する時に
- 表現の幅が広がること
- 資料を共有・配布しやすい
- ウェブの世界やアプリも活用して伝えることができる
などメリットが広がります。
これはブロガーの夢幻∞大さんによる「〔お題〕教育におけるICT〜子供たちに学びの楽しさを教えているか」と合い通じる考えではないか、と私見では感じております。
子供たちに学びの楽しさを教えているか
先生が一方的に説明する形式の場合は、デジタルガジェットを利用して、ibooksのような電子書籍・教科書を動員してもあまり現状と変わらないのではないか、と仮説として考えています。
iPadなどのデジタルガジェットはあくまでもツールです。なので、先生のITリテラシー、専門教科の理解度などに左右されていくでしょう。
子どもたちが早い時期からデジタルガジェットを活用していくのは、将来を見据えた上でメリットがあると思います。しかし、教える先生がどのように活用するか次第ではないか、と考えています。読み書き困難な子どもたちには、音声読み上げ機能が使えるので役立つと思います。
ブロガーズネットワーク翼の松本さんは「〔お題〕教育におけるICTには、あんまり期待していません。」に書かれていましたが、単に紙の教科書をデジタルガジェットの電子書籍に置き換えただけでは、定型発達な子どもにはアナログ教科書と差が出にくいのではないか、と考えています。
あくまでも上記の意見は私見に過ぎません。 「デジタルガジェットの導入はワークショップ形式の授業ならば有効かもしれない」という仮説が実際に正しいのか、今後もICTの展開を見据えていきたいと考えています。
編集履歴:2014.2.11 22:40 見出し「まとめ」を追加。染色体の頭の位置を文章の下に移動。「[教育におけるICT]デジタルガジェットの導入はワークショップ形式の授業ならば有効かもしれない」から後半部分を独立。2013.10.14 15:44 MediaBasaraに掲載していた「[教育におけるICT]デジタルガジェットの導入はワークショップ形式の授業ならば有効かもしれない」をiPhone&iPadアプリナビに移動し、二分割して掲載。その際に見出し「iBooks2で観た「動的平衡」」と「平面の図と3Dのアニメ画像で学ぶと……」を追加。2014.12.18 22:56 見出し「はじめに」を削除。2015.5.30 21:52 別記事にしていた「iBooks2で観た「動的平衡」」「教育におけるICTは在宅やワークショップで活用可能か?」を再統合。見出し「まとめ」を「疑問点:在宅やワークショップで活用可能か?」「ので」→「ため」、「っていく」→「る」、「が、」→「しかし、」、「に」→「、」、「るため、」→「ます。」に変更。「ズネットワーク翼」「です。」「しかし、」を追加。同日22:05 題名の[]を【】に変更。句読点やカギ括弧を追加。「が、」「なので、」「そうなると」「ICT」「「[教育におけるICT]デジタルガジェットの導入はワークショップ形式の授業ならば有効かもしれない」の続きです。 」を削除。
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